「勘と経験」の食数予測をAIに。1日約8,900食の給食工場が、誰が担当しても同じ数字で発注できるように
- 社名
- 静岡給食協同組合
- 業種
- 産業給食(事業所向け弁当)・冷凍食品製造
- 所在地
- 静岡県
- 製造数
- お弁当 約8,900食/日(届け先 約1,300か所)
- 導入したもの
- AI受注予測システム(受託開発)
- 課題
- 需要予測食品ロス削減属人化の解消
- お話を伺った方
- 営業本部長 髙橋 英紀さん管理部 部長 野崎 雅代さん企画部 部長 平賀 直子さん

- 献立の人気でお客様の選ぶ弁当が変わり、食数が毎回ぶれる
- 食数が足りないと盛り付け・配送が遅れ、現場に大きな負担がかかる
- 見込みが担当者の経験に頼り、外れたときの責任も担当者が背負っていた
- 献立・天気・祝日・過去の実績から、商品ごとに日別の食数をAIで予測
- 2ヶ月前のざっくりした見込みから、2〜3週間前の発注まで同じ画面で確認
- 担当者が毎月、自分の見込みとAIの予測を比べて振り返る運用
- 8月の検証で、主力商品の予測は月平均で実績とほぼ一致
- 主力商品は2026年9月から、発注にAIの予測値を使用
- 誰が担当しても同じ数字で発注でき、担当者の心理的な負担も軽くなった
静岡県で1日約8,900食のお弁当を製造し、約1,300か所に届ける静岡給食協同組合。献立や天気、連休によって日々変わる食数を、これまでは担当者の経験をもとに予測してきました。見込みが外れて食数が足りなくなれば、盛り付けの締め切りに追われ、配送の遅れにもつながります。
同組合はFactXと、献立・天気・祝日・過去の実績からお弁当の種類ごとに食数を予測する「AI受注予測システム」を開発。2026年9月からは主力商品の発注にAIの予測値を使い始めています。導入の経緯と効果を、営業本部長の髙橋さん、管理部長の野崎さん、食数の見込みを担当する企画部長の平賀さんに伺いました。
01
献立しだいで、選ばれるお弁当が変わる。12週サイクルでも毎回違う食数
事業について教えてください。
野崎さん:その日の朝に作ってお届けするお弁当を、1日に約8,900食製造しています。事業所向けの昼食弁当が中心で、ほかに幼稚園や事業所向けの夕食、高齢者向けのお弁当もあります。届け先は約1,300か所です。そのほかに冷凍弁当の製造や、社員食堂などの受託も行っています。
平賀さん:お弁当は価格帯の違う3種類があります。一番お手頃な「なごみ」が主力で、1日7,000〜8,000食ほど。その上に「あじさい」、一番高いのが「健康弁当」です。

食数の見込みは、どのように立てていたのですか?
平賀さん:2回に分けて見込んでいます。まず2ヶ月ほど前に、ざっくりした数を出します。野菜やお肉は入札制なので、「この月はキャベツを何千kg使います」と業者さんにお伝えして価格をいただき、仕入れ先を決めなければいけません。そのうえで、2〜3週間前にもう一度細かく見直して、正式に発注します。
野崎さん:以前は私のいる管理部で、「月曜はこのくらい、火曜はこのくらい」と曜日ごとにおおよその食数を決めておき、それをもとに見込んでいました。ただ、それだと数字の平均のような形でしか出せず、献立や天気による変化までは読み切れませんでした。
何が一番、読みにくかったのでしょうか?
平賀さん:献立です。献立は12週間のサイクルで同じメニューが回ってきますが、食数が伸びなかった献立はおかずの組み合わせを変えるなどテコ入れするので、まったく同じにはなりません。それが当たって伸びることもあれば、「前回はすごく伸びたのに、今回はなんで伸びないの?」ということもあります。
野崎さん:それに、なごみとあじさいの間でお客様が行き来するんです。あじさいの献立が人気だとそちらに流れるし、その逆もある。ほかにも連休や祝日、雨の日など、考えることが多すぎて、人の頭では読み切れませんでした。
02
「300食足りないと、解凍から始めることになる」
見込みが外れると、現場では何が起きていましたか?
平賀さん:多すぎた場合は、前日の午前中に野菜の仕込みが終わっているので、作るしかありません。冷凍できるものは冷凍しますが、できなければ廃棄です。
平賀さん:本当に困るのは、足りなかった場合です。お客様には献立表をお配りしているので、メニューはなるべく変えたくない。100〜200食の不足なら、工場中から似た食材をかき集めて何とかします。でも300〜400食ずれると同じものは用意できず、メニューの変更をご案内することになります。
不足分を、その場で作り足すことはできないのですか?
髙橋さん:盛り付けは朝9時までに終えないと、配送に出られません。そこで300食足りないとなったら、解凍から始めて、揚げて、すぐに冷却する。食中毒を防ぐために、20℃から60℃の温度帯を一気に下げる必要があるんです。「足りないから300食揚げて」というわけにはいきません。
髙橋さん:配送もどんどん遅れていきます。配達員が焦って運転すれば、事故にもつながりかねません。だから見込みは、どうしても多めに立ててきました。
03
10年前にExcelで諦めた予測を、AIで再挑戦
AIで食数を予測しようと考えたきっかけを教えてください。
髙橋さん:実は10年ほど前に、Excelで過去のデータから食数を割り出す計算式をつくろうとしたことがあるんです。曜日、天気、献立が肉か魚か、といった項目にフラグを立てて。でもExcelには時間軸がないので、「祝日の前後」のような条件を表すために、フラグがものすごい数になってしまった。どの項目が効いているのかを1つずつ検証するのが大変で、途中で諦めてしまいました。
髙橋さん:最近になってAIのことを知り、Pythonで自分でやってみようとも思ったのですが、そこは難しかった。そんなときに、別のご相談でFactXさんと話す機会があって、AIでできることの幅を知りました。「これなら、あのとき諦めた予測ができるかもしれない」と思ってお願いしたのがきっかけです。

進め方の印象はいかがでしたか?
髙橋さん:データをお渡しすると、すぐに形にして返していただけました。
野崎さん:むしろ、こちらの返事が追いつかないくらいでした。
髙橋さん:1つ反省があるとすれば、最初の打ち合わせに、実際に見込みを立てている担当者を入れておけばよかったことです。担当者が加わってから「こうしたい」という要望が次々に出てきました。これから導入を考える会社には、最初から現場の担当者に入ってもらうことをお勧めしたいですね。
04
8月の検証では、平均でほぼ実績どおり。「誰が見ても同じ数字になる」
現在はどのように使っていますか?
平賀さん:7月からは、各商品の担当者が月末に、自分の見込みとAIの予測がどれくらい違ったかを確認しています。主力のなごみは、9月14日の発注分からAIの予測値を使い始めました。
野崎さん:担当は1人に固定せず、週ごとに交代しています。1人に任せきりにすると、その人がいないと回らなくなってしまうので。
予測の精度はいかがですか?
髙橋さん:部長会でAIの精度を報告するために、8月分のデータを書き出して、予測と実績を比べてみました。なごみは月の平均で、6,341.7食と6,342.1食。ほぼ一致です。日ごとのブレも2%程度でした。
平賀さん:なごみは、事業所が「なごみ1種類」で契約していて、社員の方に選択肢がないケースが多いんです。献立で選ぶ人が少ないので、比較的読みやすい。あじさいや健康弁当はお客様が献立を見て選ぶのでブレが大きく、そこはこれから精度を上げていきたいところです。
導入して、良かったと感じることは?
平賀さん:気持ちの面が一番大きいですね。これまでは、余らせてしまったり、足りなくなったりすると、担当者がすごく責任を感じていました。名指しされるわけではないけれど、やっぱり気まずい。それが「AIが予測した数字」になることで、精神的にずいぶん楽になると思います。
髙橋さん:誰が担当しても同じ数字が出る、というのも大きいです。見込みが特定の人の経験に頼らなくなりました。
05
「なぜこの日は減ったのか」まで、AIに聞けるように
今後、このシステムに期待することを教えてください。
髙橋さん:献立の中身をもっと反映できるようにしたいですね。魚の日は間違いなく減る、といった傾向があるので、それが反映されれば精度はさらに上がると思います。
髙橋さん:それから、結果の理由が知りたい。「メニューにこれが入っているから」「雨だったから」「祝日があったから」減った、と分かれば、次はこうしようと考えられます。数字だけでなく、アドバイスまでくれるとありがたいです。
平賀さん:たとえば、天ぷら盛り合わせの日はいつも平均より50〜60食伸びるんです。でも同じ天ぷらでも減る日がある。理由が分からないから、怖くてどうしても多めに見込んでしまう。チャットで「なんでこの日は減ったの?」と聞けるようになったら、すごく助かりますね。
静岡給食協同組合の皆さま、お忙しいところ貴重なお話をありがとうございました。
※掲載内容は取材当時(2026年9月)のものです。
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